約 1,207,078 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/616.html
「everybody PASSION!」/Mitchell Carroll ラブ「せつな、いくらドーナツ美味しいからって、そんなに慌てて食べたらむせるよ。」 せつな「ふふふ、大丈夫よ。ウッ!」 ラブ「ほらー、だから言ったじゃん。大丈夫?」 せつな「んー!んー!(左手で胸を叩く)」 美希「屋良...」 ラブと祈里「えっ?」 美希「な、なんでもないっ!」 おしまい
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/77.html
鏡の中の少女はゆったりと微笑んでいる。 少し下がった目尻に丸い頬。いかにも優しげな、おっとりとした雰囲気。 まるで邪気のない、無垢な天使の微笑み。 (でもね、わたしは知ってるの。) あなたは決して天使なんかじゃない。無垢とは駆け離れた汚濁にまみれた存在だと言う事を。 欲しいものの為ならどんな卑怯な真似も出来る。 己の欲望の為なら親友を裏切る事すら厭わない。 それが誰よりも愛している筈の人をズタズタに切り裂く行為だとしても。 (笑いなさい、わたし。) 彼女の望む笑顔を。 それで今更せつなが安らげる訳ではない事は分かっている。 それでも他に出来る事など思い付かない。言われるままに偽りの微笑みで向き合うしかない。 悲しいくらいに無力な子供だ。逃げ出す勇気すら持てないのだから。 鏡を指でなぞる。どうと言う事はない、と言い聞かせる。 いつものお出掛け。待ち合わせして、四人で買い物。 お喋りして、お茶を飲んで、それぞれの家路につく。それだけだ。 何も起こりようがない。今までだってちゃんと出来た。 だから今回だって平気。近付き過ぎないように。かと言って、避けている様には見えないように。 大丈夫。またせつなに会える。話が出来る。それで充分幸せではないか。 (さあ、行きましょうか。) 鏡の中の少女が微笑み返してくれる。 この表情を忘れないで。これ以外の顔を見せては駄目。 (…分かってる。ちゃんとやれるから。) 時計は待ち合わせの10分前。ちょうどいい時間だ。 以前ならこんなにギリギリに出るなんてあり得なかった。人を待たせるのは嫌い。 時間に遅れるのは相手の時間を盗む事。 人を待たせるのは、自分の所為で無駄な時間を使わせる事。 そう両親から躾られて来た。 待つのは平気。本が一冊あればいくらでも待てる。 だから待ち合わせはいつも一番乗りだった。 自分の姿を見つけて、嬉しそうに手を振って駆けて来てくれる友達の姿を 見るのが待ち合わせの楽しみの一つだったから。 でも今は違う。 必ず最後に現れるようにしてる。 ゆっくり歩き、最後だけ少し小走りに。いかにも遅れそうだったので慌てている、と言う風に。 急に遅刻するようになった祈里を誰も、ラブも、美希も、せつなも咎めた事はなかった。 理由なんて聞くまでも無いのだから。 せつなと二人きりになる訳にはいかない。 ラブと三人でも駄目だ。美希が間にいてくれて、四人なら。 四人なら何とかなる。 歩きながら時計を見る。慎重に、不自然にならない程度に歩調の速さを調節しながら。 (………あ……。) ドーナツカフェ、せつなが一人座っている。いつも側にいる筈のラブの姿は見えない。 少し隠れて様子を見た方がいい。そうした方がいいのは分かっていたけど…。 静かに本を読んでいるせつなの横顔。時々髪を耳に掛ける仕草。その白い指先。 姿勢良く、すっと伸びた背中。綺麗に揃えられた足。 目が、離せなくなった。 胸が締め付けられる。 ふと、せつなが顔を上げた。立ち尽くす祈里に気付いたのだ。 本を閉じ、柔らかく微笑む。小さく手を上げて祈里に振ってくれる。 涙が出そうになった。思わず、錯覚しそうになる。 「あの事」はせつなを求める余りの妄想だったのではないのか。 実る筈のない初恋。持て余す程の想いが見せた幻だったのではないのか。 そうでなければ…… せつなが、今でも微笑み掛けてくれる訳がないのではないか、と。 しかしそんな甘い幻想は一瞬で潰える。 「せーつなぁ!おっ待たせえぇぇ。」 ラブが駆け寄り、後ろからせつなに抱き付く。 「あ、ブッキーも来たんだ!おーい、やっほー!」 眩しいくらいの朗らかさで手招きするラブ。 でも笑顔の前に投げ掛ける瞬きにも満たない、色の無い視線。 勘違いしないで。 あなたがここにいるのは許されたからじゃない。 あなたはまだ何も償ってはいない。 (分かってるわ、ラブちゃん。) その視線が残す、棘とも言えない程の小さな楔。 都合のいい幻に囚われそうになっていた祈里の中に深々と食い込む。 ごめんなさい、ちゃんと分かってます。 もう二度とあなたの恋人を傷付けたりしません。 指一本触れません。 笑顔を浮かべ、側に。それだけを守ります。 「美希ちゃんは?遅れるなんて珍しいね。」 「あれ?ブッキー連絡行ってない?」 「美希、出掛けにおば様と揉めたんですって。」 慌ててリンクルンを見る。時間に気を取られてメールに気付かなかった。 『ごめん!ちょっと遅れる!ママが絡んで来るんだもん。 ブッキー、良かったら先にうちに寄らない? 何ならラブとせつなには先に行って貰って後で合流してもいいし。』 メールを見ながら込み上げる思い。 美希に申し訳ない、と思う。こんなにも気を遣わせてる。 祈里がラブとせつなに近付き過ぎないように、離れ過ぎないように。 「あっ、美希たん来た。」 返信する前にラブの声で我に返った。息を乱して駆けて来る美希が見える。 「ごめんね、美希ちゃん。メール気付かなかった。」 「いいわよ、アタシも出したの時間ギリギリだったし。あ、ラブ、それちょっと頂戴。」 まだ整わない息を静める為か、ラブのジュースを横取りしている。 「あーん、あたしまだ飲んでないよぅ。」 「いーじゃない。後で奢るから!」 「美希、何かおば様に叱られたの?」 せつなの台詞に美希は少しムッとする。 「アタシが叱ってたの!まったく、ママったら!」 「美希は子供なのに?お母さんを叱るの?」 キョトンと首を傾げるせつなに、美希は大袈裟に眉をしかめて見せる。 「あのねぇ、せつな。一口に母親って言っても、みんながみんな あゆみおばさんや尚子おばさんみたいなしっかり者の良妻賢母ばかりじゃないのよ…。」 「?でも、お母さんなんでしょ?」 「いや、だからね…。中学生の娘を一人置いて、『明日からハワイ行って来まぁす!』 って言える人って事で察してちょうだい…。」 皆まで言わせないで。 いかにも苦労人の風情で眉間を押さえる美希に、まだキョトンとしているせつな。 そんな二人をいかにも可笑しそうにケラケラ笑うラブ。 以前より美希は饒舌になった。まるで会話が途切れたら絆まで切れてしまう。そう恐れているかのように。 ラブは逆に余り喋らなくなった。美希とせつなが話しているのを面白そうに聞き、祈里と美希が 話している時は静かにせつなに寄り添っている。 せつなは自然に祈里にも話し掛けてくれる。 今読んでる本の話、手芸の話。祈里が一番話しやすく、そして当たり障りのない話題を。 他愛の無いお喋り、ウィンドウショッピング、甘い物を食べながらの休憩。 以前と何も変わらない。変わったのは、決してラブもせつなも祈里の隣にはならない事。 いつも美希が間に挟まってくれる。それだけだ。大した事じゃない。 ラブもせつなも祈里と目が合えば微笑みを返してくれる。 祈里から話し掛ければ当たり前に答えてくれる。 なのに何故だろう。こんなにも時間がゆっくりと進むのは。 まだ帰る時間にならない。ふとそんな事を考えてしまうのは。 せつなに会えた瞬間、乾いてひび割れていた心に潤いが染み込んでいくのを感じる。 それなのに、何故だろう。会って数時間。会う前よりも心がひりついている。 あんなにも会いたかったのに。 声が聞きたかった。顔が見たかった。同じ空間に立っていられるだけでいい。 そう思ってるのに。 不満なんてあるわけない。 まだせつなが、皆が笑顔を向けてくれる事すら奇跡と言っていいくらいなのに。勝手なものだ。 それなのに一緒の時間が終わってしまえは、また会いたくて会いたくて堪らなくなるのだから。 いつもそう。同じ事の繰り返し。 夕闇が迫り、そろそろ解散になっても自然な時間。 祈里はホッと息を洩らす。 (もう…帰るって言っても可笑しくないよね…。) 苦笑いが込み上げそうになる。 誰の所為でもない。居心地が悪いなんて。そんな事を自分が無意識にでも考えるのは不遜だろうに。 嫌ならさっさと逃げ出せばいい。誰も引き留めはしない。 他ならぬ、祈里の為に皆が色んな思いを飲み込んでいるのだから。 「あの……わたし、もうそろそろ…。」 帰る。そう声を掛けようとした時に、偶々目に付いた。 他意なんて無かった。 本当に、無意識の行動だった。せつなの肩に小さな虫が止まっていた。せつなは気付いていない。 毒がある。刺されたら腫れる。払わなきゃ。ただそれだけだった。 瞬間、祈里の手に走った痛み。 衝撃に半歩ほどよろけてしまった。 せつなの肩に指が触れる、その直前。気付いたせつなに凄い勢いで手が振り払われた。 せつな自身、自分の行動が信じられないのだろう。 色を無くした顔に瞬く間に驚きと罪悪感が広がる。 「……あ、ごめんなさい…。ちょっと…びっくりしちゃって…。」 「あ、うん。こっちこそごめんね。急に触られたらびっくりするよね。」 「………………。」 「………………。」 祈里は必死に顔全体で笑顔を作る。 気にしてない、何でもない。ちょっと驚かせてしまった。ごめんなさい。 せつなに、祈里がそう思ってる様に感じて貰えるように。 申し訳なさそうに俯くせつなに。 お願いだから気にしないで。 あなたが気に病む必要なんて何もない。 わたしが悪いの。どんな理由でも触れたりしてはいけなかった。 無意識だったんでしょう? せつなちゃんはちょっと驚いちゃっただけ。 わたしは、何も気にしてない。わたしが悪いんだよ。 「せつなぁ~、美希たんがもうそろそろ帰ろうかってさー。」 「あ、うん。そうね…。ブッキーはどうする?」 「うん、わたしも帰ろうかな。ちょっと寄り道するからあっちから帰るね。」 そう。じゃ、またね。 そう言ってラブの元に駆け寄るせつなの背中に浮かび上がる安堵した空気。 何度も振り返り、手を振る三人に笑って応える。今日は楽しかった、と。 またね、バイバイ! 後で電話するから! うん、わたしもメールするね。 口々に交わされる言葉。これもいつもの事。予定された別れの挨拶。 一人になった祈里は唇を噛み締める。 せつなに触れようとしてしまった手を血が止まるほど握り締めた。 せつなの青ざめた表情。夢で見たのと同じ顔だった。 そこにあるのは拒絶でも、忌避でも、嫌悪ですら無かった。 紛れもない、恐怖。ただそれだけ。 いつも強く、凛々しいせつな。 ピンと背筋を伸ばし、真っ直ぐに前を見ていた彼女。 それを地面に引き倒し、泥にまみれさせたのは自分だ。 怯え、竦んだ子供のようなせつな。 自分がそうさせてしまった。 祈里は爪が食い込むほど拳を握り締める。 どうか、せつながこの事で心を患わせませんように。 どうか、祈里を傷付けてしまった…そんな風に思いませんように。 (せつなちゃん、ごめんなさい。……せつなちゃん。) せつなは悪夢にうなされてはいないだろうか。 せつなにはラブが付いている。しかし、ラブも夢の中までは守る事は出来ない。 せつなの安らかな眠りを邪魔していないだろうか。 それだけが、気掛かりだった。 間違いなく、せつなは自分と同じ夢を見ている。そんな気がしていた。 黒ブキ28へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/708.html
「チョコレート・ダウン」2 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ せま苦しい掛け布団の下で、少女たちが身体を縮めるようにして向き合っていた。 二人分の体温がこもって逃げ場がないため、息苦しさも上乗せされてしまうが、ラブもせつなも、ここから出たいとは思わなかった。 全ての光がシャットアウトされて視覚は役に立たない。いや、必要なかった。相手の甘い声を捉える聴覚と、カラダのやわらかさを味わうための触覚さえあれば充分なのだから。 くちびるとくちびるの接触。最初のくちづけから数分が過ぎているけれど、何度繰り返しても、せつなはくすぐったがって、すぐにくちびるを離してしまう。キスというよりも、むしろスキンシップに近い感覚だった。 クスクス笑ってしまう彼女の腰に手を伸ばす。すべらかな肌の感触。ラブの指をくすぐったがるせつなが、暗闇の中でもぞもぞと裸身をくねらせた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ――― 「おしえて。ラブは、どんなお詫びがほしいの?」 ――― 「せつなの着ているもの全部欲しい」 ゾクッ・・・。 ラブの答えを聞いた瞬間、高いガケの端っこで足を滑らせたみたいに鳥肌が立った。恐怖ではない、別な何かを感じて。 二人して掛け布団をかぶっているために、視界は真っ暗に閉ざされている。だから見られてしまうことはない。それでも、少し動けば身体同士がぶつかりそうなほど近くで ――― 。 恥ずかしさに締め付けられる胸の内側で、運動もしていないのに鼓動が速くなった。 (そう・・・・・・興奮しているのね、私は) ラブの前でイケナイ事をする ――― その背徳的な誘惑に、あえて逆らわない。 激しい羞恥に神経がパニックを起こしてしまったらしく、腕がガクガク震えて、指も自由に動かない。そんな状態で、着ているパジャマをたどたどしく脱ぎ、それをラブに渡す。 もちろん、パジャマだけではなく下着も。 最後にショーツを手渡した時、せつなは真っ赤になった顔を伏せ、両目の端に涙ににじませていた。自分の体温が染み付いた生ぬるい生地の感触を、ラブがどう思うか ――― 一糸まとわぬ姿になったことよりも、そちらのほうが恥ずかしかった。 「今、どんな気分?」と、ラブがたずねてきた。 せつなが答えられないでいると、もう一度同じ事をたずねられた。 恥ずかしさをこらえて口を開こうとはするものの、やっぱり答えられないでいると、くちびるをお仕置きされてしまった。何よりも愛おしい、やわらかな感触に固くふさがれるいうペナルティ。 敏感なせつなが、びくっ、と身をすくめて顔を離してしまったせいで、二人にとってのファーストキスはたった数秒間だけだったが、そのおかげでようやくラブの問いに答えることが出来た。 「今は・・・・・・夢みたいにしあわせな気分」 くすぐったいキスの責めでいじめられつつ、カラダのいたる所をさわられていく。 ラビリンスで培った兵士としての肉体。ひんやりするような白い肌に包み隠された筋肉は、戦闘性を秘めた美しい武装だ。それが、ラブの手や指を感じただけで甘美に喘ぎながら震え、降伏を宣言するかのごとくチカラが入らなくなってしまう。 「ああ・・・あっ、ラブっ・・・」 「せつなの身体って、すごくきれい。肌もすべすべだね。ふふっ」 二の腕を這い上がってきたラブの指先が、ほっそりした肩の丸みをなぞって背中へと回りこむ。なめらかな白い肌をツツツ・・・と這い下りてくる指の感触。そのくすぐったさに、思わず背筋が弓反った。 「ラブ、駄目なの・・・・・・」 普段のせつなからは考えられないくらい弱々しい声の響き。母を求める迷子みたいに持ち上がった手が、きゅっ・・・とラブの肩につかまる。 許して ――― そう続けようとしたくちびるが、「チュッ、チュッ」と、こまやかな音を鳴らすキスで封じられてしまった。ラブのいじわるっ!と心の中で叫んで目尻に涙を溜める。くやしいと感じても、キスしてもらえたり、カラダをさわってもらえたりするのが気持ちよくて、抵抗する気が一切湧いてこない。 (こんな感覚、私・・・知らないの・・・・・・。ラブ、私にもっと・・・・・・) せつなのラビリンス時代、肉体同士の接触とは徒手戦闘の過程であり、そこにあったのは痛みの感覚だ。こちらの世界でキュアパッションとして生まれ変わったのちは、身体と身体のふれ合いは、お互いの心に安らぎやぬくもりを与えるものであると学んだ。 これは後者の延長 ――― 。 しかし、ラブ以外の相手に同じ行為をされても、ここまで『女の子らしい』反応は見せないだろう。 触れられた部分が感じているのは、甘ったるく味付けされた微弱電流の刺激。そのくすぐったさにさらされると、せつなの意識の針が一瞬、興奮状態の方向へビクッ!とぶれる。それが何度も繰り返されると、ついには意識の針がずっと興奮状態の領域を指したままビクビクと振れ続けるようなる。 言葉として覚える前に、カラダで覚えてしまった<快楽>という単語。 せつなの全身が快感を欲しがって、ぶるるっ・・・となまめかしく身震いした。 素肌を直接なぞられるたび、自分が全裸という恥ずかしい姿にあるコトを否応なく自覚させられ、その羞恥は、せつなの心を倒錯した悦びでうずかせた。 掛け布団に閉ざされた暗闇の中とはいえ、ラブの前で、カラダも、声も、反応も、すべてをさらけ出して ――― 。 腰の後ろをねっとりとまさぐっていたラブの手が、わき腹へと移動してきた。びくんっ、と身をすくめるせつなの反応を愉しんでから、ゆっくりと指を動かし始める。 いいようにカラダをもてあそばれているのに、ラブへの愛おしさが心の中で高まっていく。 「ん゛っ、ラブは・・・あっ、ラブは私の・・・、はあっっ、私の『居場所』なの」 ――― びくっ、びくっ。 腹筋が不規則に引くついて、どうしても声が震えてしまう。 クルクルと小さな円を描く指先が、わき腹のやわらかさを意地悪く刺激している。でも、せつなにとってそれは、もう『くすぐったい』だけではない。きもちいいという悦びの感覚だ。 ラブの次のキスを待ちきれず、裸身をくねらせて自分から彼女のくちびるを求める。 「 ――― ンンッ・・・」と、ラブの喉がうめいた。せつなの濡れたくちびると、軟らかに結ばれる感触。熱く溶けた官能的なキス。 (ん、これって・・・・・・おねだりのつもり?) こんな可愛いせつなは初めてだ。もっと、いじめてあげたくなる。 こしょこしょとわき腹をくすぐっていた指が胸のほうへ這い上がっても、せつなの身体は逃げようとしなかった。ジリジリと迫ってきた指で、なだらかな曲線を描くふくらみの稜線に触れる。 「あっ・・・ん・・・」と、キスを解いたせつなの口が可愛らしく喘いでから、言葉を再開した。 「故郷のラビリンスも、この家も私の居場所だけど、ラブはそれ以上に私の特別な『居場所』なの」 「ふふっ、うれしいなぁ」 せつなのまっすぐな言葉が心に届いて、くすぐったくなってしまう。ちょっとじんわりきたラブが軽くうつむいて照れをこらえる。 (・・・・・・じゃあ、あたしはせつなの一生の『居場所』になっちゃってもいいのかな?) ――― ウン、いいよねっ。 分かりきった答えを聞く必要もない。ラブがクスクスと笑い出す。 「ずいぶんとふつつかな『居場所』ではございますが、これからも末永く、いつまでも・・・・・・」 「こ・・・こらぁっ、胸を撫でまわしながら言うセリフじゃないでしょっ」 裸身をあだっぽく悶えさせたせつなが、「はあ・・・」と苦笑まじりの溜め息をついた。 「もお、照れ隠しにこういうコトするんだから。ふふっ」 胸を這っていた手を両手で掴んで、せつなが自分の口元まで運ぶ。お仕置きとして、かぷっ、とラブの指先を甘噛みしてから、いじらしい声でおねだりした。 「ラブにいっぱいさわられたせいで、カラダが熱いの。・・・・・・おねがい、最後まで面倒をみて」 「チョコレート・ダウン」3へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/149.html
「myself,yourself」/◆BVjx9JFTno 目が覚めた。 時計を見る。 真夜中。 ラブの唇が、近づく 夢を見ていた。 胸が高鳴ったまま、 引く気配が無い。 ラブは、もう 眠ってしまったかしら。 ラブの体温を、 感じたい。 ラブの側に、 行きたい。 ラブの、ところへ... 突然、景色が 変わった。 アカルンが勘違いしたのか、 気を利かせてくれたのか。 ラブの部屋は、 真っ暗。 布団を、頭から 被っている。 眠っているようだ。 違う。 もぞもぞと、動いている。 私が来たことにも、 気づいていない。 気配を殺し、 耳をすませる。 布が擦れる音。 吐息。 「んっ...んっ...」 時々混じる、声。 何をしているのか、 解ってきた。 ひとりで、慰めている。 聞いてはいけないものを、 聞いた気がする。 戻らなきゃ。 「...つな...」 体が硬直した。 「んっ...せつな...」 私の体が、 びくんと跳ねた。 私を想いながら、 してるの? 吐息が、 だんだん荒くなる。 「はぁ...あっ...せつな...せつな...」 下腹部が、熱くなる。 うるおう、感覚。 息が、詰まりそうになる。 口の中が、乾く。 「せつな...ああっ...せつな...!」 布団が大きく上下し、 その波が、だんだん緩くなる。 「はっ...!」 詰まっていた息が、 出てしまった。 「ひゃっ!」 布団がはねのけられ、 ラブと目があった。 布団の中から出てきた 猛烈な熱気が、部屋を満たす。 「せつな...何で?」 胸をはだけた、パジャマの上。 足首まで降りた、パジャマの下。 「ごめんなさい...私... 来るつもり無かったけど...」 「見てたの...?」 「...聞いてた」 「せつな...手...」 言われて、気がついた。 私の右手が、パジャマの下に 入り込んでいた。 いつの間にか、私も 自分で触れていた。 手を、引き抜く。 街灯の光が、 少しだけ入る部屋。 濡れた指先が、 光を反射している。 ラブが、微笑む。 「せつなも...同じなんだね」 ラブが体を起こし、 私に向かって、足を開く。 「ほら...あたしの...」 ラブが、 自分で拡げる。 滴る蜜が、光を反射する。 「あたし...まだ足りないよ...」 ラブの指先が蜜をすくい、 上にある突起に塗り拡げる。 ラブの吐息が、 また激しくなる。 「ねぇ...せつなのも...見せて」 部屋の熱気と、 ラブの吐息。 正気でいられるわけが、 なかった。 ラブのベッドに、 のぼる。 パジャマと下着を脱ぎ、 ラブに向かって、足を開く。 自分で、拡げる。 「はぁっ...せつなも...すごいよ」 体が、ゾクゾクと震える。 私のそこも、 歓喜するように震える。 左手の指で、 そこを舐る。 右手で、パジャマの ボタンを外す。 尖りきった先端が、 愛撫を求めるように飛び出す。 指で、円を描くように触れる。 「んぅっ...!」 思わず、声が漏れる。 「あはっ...そうするのが好きなんだ...」 「いや...言わないで...」 しているラブを、見る。 している私を、ラブに見られる。 ふたつの吐息が、重なってきた。 「ラブ...ラブ...私...!」 「せつな...あたし、またっ...!」 ふたりの腰が、不規則にうごめき、 大きく跳ねる。 声にならない声が、重なる。 頭の中が、真っ白。 恥ずかしいはずなのに、 それ以上に、体が求めている。 止まらなかった。 ラブを押し倒し、 反対向きにのしかかる。 「はぁっ...せつな...積極的っ...」 また体が震え、 滴るのが、解る。 腰を落とし、押しつける。 ラブも唇を押しつけ、 激しく吸い付いてくる。 私も、ラブの泉に 顔を埋める。 舌でかき回し、 吸い合う。 夢中で、貪り合う。 お互いの腰をしっかりと抱き留め、 何度も、何度も達した。 空が白みかかっていた。 向き合って、寝転がる。 汗にまみれ、乱れた髪を 梳き合う。 「ふたりの方が、ずっといい...」 「そうね...」 次の夜までは、姉妹のような、 双子のような、友達。 私たちは、友達に戻る前に、 息が苦しくなるくらい、唇を押しつけ合った。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/78.html
負の感情はコントロール出来る。 怒り、憎しみ、悲しみ、怯え。囚われず、外に昇華させる。目の前の倒すべき相手に。 ずっと、そうやって生きてきた。 痛みに怯えていては戦えない。恐怖に囚われていては判断を誤る。 心と体を切り離す訓練は出来ている。 体は戦う為の道具。心はそれを動かす為のもの。感情なんていらない。 そうでなければ、誰かを蹴落とすことすら出来なくなってしまうから。 (私は、弱くなってしまったのかしら………) 闇の中から伸びる手。 握り潰せそうな柔らかな手のひら。軽く捻り上げただけで折れてしまいそうな華奢な腕。 簡単に振り払えるはずの細く白い体が鉛のように重くのし掛かる。 体の内側を軟体動物が這い回り、食い荒らされるような感覚。 おぞましさに全身を総毛立たせるはずが、喉から漏れる息は確かな熱を帯びていた。 哀願の嗚咽は媚びるように甘ったるく響き、蹂躙されているはずの体は 悦びの雫を滴らせる。 (早く…終わって……) 意識を体から切り離し、外側から観察する。 冷めた素振りを見せては駄目。意地になって責めて来るから。 ある程度昂って見せなくてはいつまで経っても解放して貰えない。 もうそろそろ…達してしまった方がいいだろうか…。余りに早いとまた繰り返される。 あと少し、我慢すれば………。 「………せ…な、…せつな、せつな…。」 ビクリと体が跳ねる。 肩を軽く揺すられ、頬を撫でられていた。 暗い部屋、見馴れた天井、そして、覗き込んでいる愛しい顔。 切羽詰まったように張り詰めた声と裏腹に、見上げたラブの顔は穏やかに微笑んでいた。 (……………夢を……) せつなは眠気を覚ます振りで手の甲で瞼を擦る。 良かった。涙は出ていない。 「ゴメン、起こしちゃって。何だか眠れなくってさ。」 一緒に寝てもいい? そう、ラブはせつなのベッドに潜り込む。 うなされてたよ。 悪い夢を見たの? ラブは一言も聞かない。 せつなが話したくないのを知ってるから。 (ごめんね…、ラブ…。) ずっと添い寝して貰っていたのを少し前からちゃんと別々の部屋で眠るようにした。 まだ悪夢にうなされるせつなを心配したラブは躊躇ったが、 心細い時はちゃんと言うから。何でもちゃんと話すから。 そう言って何とか納得してもらった。 ラブはまるで雛を守る親鳥のようにせつなを包み込んでくれる。 その羽根は温かく、優しく、何時までもうっとりと身を任せていたくなる。 愛され、守られるのは何と心地好いのだろう。 でも、それだけではいけない。そう思ったから。 並んで歩きたい。 手を引かれ、後から付いていくのではなく。 並んで、手を繋いで、お互いの目線をちゃんと合わせて。 柔らかな胸で微睡む至福よりも、自分の足で立って見つめ合いたいから。 「ごめんね、ラブ。」 「…何が?」 「私、我が儘ね。」 「リアクションに困るな…。」 「どして?」 「だって…はい、とも、いいえとも答えにくい。」 髪を梳く指が耳を掠め、せつなはくすぐったさに忍び笑いを漏らす。 それに気付いたラブが、首筋、背中、脇腹、と摩る振りでくすぐっていく。 小さく身を捩りながらのじゃれ合い。 せつなの肌から不快に粟立っていた感覚が拭われていく。 寝室を別にしてもあまり変わらなかったのかも知れない。 だってラブはいつもせつなが助けを求める前に手を差し伸べてくれるから。 せつなに関しては妙に嗅覚が働くのか、虫が知らせるのか。 どんな悪夢を見ても、一人怯えながら朝を迎えた事は一度も無かった。 「ありがとう、ラブ。」 「だから、またリアクションに困るってば。」 「どういたしまして、で、いいのよ。」 「何だかなあ…。」 あんなのは何でもない事。 死んだ方がまし、そう思う程の苦痛を受けた事だってある。 それに、もっと手酷い裏切りにあったではないか。 全身全霊を捧げていた相手に切り捨てられ、命を奪われた。 塵芥程の重みもなかった命。誰にも顧みられる事のなかった過去の自分。 それに比べれば……… 愛する人がいる。 温かい家族がいる。 笑い合える友人がいる。 私は、幸せ…。 クスリ…と、せつなは笑う。 分かっている。 過去を引き合いに出して比べる事に意味なんてない。 もっと酷い目にあった、だからこれくらい我慢出来る。 あれに比べたら大した事ではない。 こう言う考えは危険だ。 危険で、不健康で、心身を蝕む。 大きくても小さくても傷は傷。 大怪我でも早急に的確な処置を施せば後遺症もそれだけ軽く済む。 軽症だと侮って手当てを誤れば、化膿してそれが命取りになる事だってある。 身も心も弄ばれ、深く傷付いた。 その自覚はある。祈里の為にその事で自分を誤魔化す気はない。 ただ祈里の謝罪を受け入れ、許す、と言う事も出来る。 でもそれは…何もかも水に流し、受け入れる事はラブに対する裏切りに思えた。 ラブは、深く深く愛してくれている。 溺れてしまいたくなるほどに。 せつなの中にある「愛している」、と言う想い。 ラブに対してだけ感じる、胸が痛み、溢れ零れる温かな涙を湛えた想い。 それは、一滴たりとも他の誰かに向ける訳にはいかないから。 せつなの中に巣食う菌糸のような膿んだ傷。 今日、祈里には気取られてしまっただろう。 祈里は罪の意識に苛まれているかも知れない。 いや、間違いなくせつなの中の祈里に対する恐怖を見付け、自分を責めているだろう。 痛々しいまでの笑顔。 それでも、せつなはもう一度自分から祈里に触れる事は出来なかった。 手を取って、「大丈夫よ。」、そう微笑めば祈里はホッとしただろうに。 それでも…、瞬時に粟立った肌と震える手は誤魔化せそうになかったから。 布団の中でラブに全身を押し付ける。 (まだ…駄目なのかしら…) まだ傷は痛んでいる。血は流れ続けている。悪夢は途切れる事なくやってくる。 まだ、ラブには信用して貰えそうにない。 大丈夫、平気よ。そう笑って見せても余計に心配を掛けてしまうだろう。 以前、ラブに言われた。 せつなを安心させてあげられてなかった。 だから、信じて貰えなかった。 今なら、その意味が分かる。 せつなの大丈夫、は無理していると言う事。 せつなの心配しないで、は痛くて堪らないと言う事。 そしてボロボロになりながら、平気よ。と笑うのだ。 多分、ラブにはそう受け取られている。無理もない。 偽りの姿で始まった出会いだったから。 何度も嘘を付いたから。 騙し、振り回そうとしたから。 そして、自分を大切にする。そんな事、考えた事もなかったから。 せつなはラブの胸に顔を埋め、その鼓動を聞く。 規則正しく脈打つ命。子守唄のように愛しい響き。 お互いの鼓動を捧げ合った片身。 どうすれば、分かって貰えるだろう。 痛む傷。だけど以前よりも疼かなくなってきている。 流れる血。だけどもう止まっている時間の方が長い。 追い掛けてくる悪夢。それも毎晩ではなくなった。 目を覚ましても泣いている事も減っている。 (ねえ、ラブ。私、あなたが思ってるほど辛くはないのよ…。) 確かに傷は癒えてはいない。 それでも、だんだん傷は小さくなっていってる。 傷痕は残るだろう。古傷となって思い出したように痛む事もあるかも知れない。 だから、ラブ。我が儘を言うけど許して欲しいの。 私、ちゃんと治して行くから。 痛みに知らんぷりせず。ちゃんと向き合うから。 待ってて欲しい。 一緒に、手を繋ぎながら。 あなたが側にいてくれる。 あなたの一番近くにいたい。 だからこそ、自分の足で立っていられるようになりたいの。 ………… ……………………… せつなに関してはあたしは異常に勘が働くのかも知れない。それとも虫の知らせ? 壁の向こうの様子を伺い、何となく部屋を覗く。 寝苦しそうにしている時もそうでない時も、夢見の悪い時は分かるようになった。 せつなは人の気配に敏感。 良く眠れている時はあたしが部屋に入った時点で気付いている。 逆に悪夢に囚われている時ほど中々目覚めない。 はっと目を開け、あたしの顔を見てホッと息を付く。 あたしはなるべく穏やかな顔をするように頑張る。せつなに安心して貰いたくて。 心配そうな顔するとせつなの方が無理して笑おうとしちゃうんだよね。 ごめんね。 ありがとう。 せつなは何度も言うけど、あたしどうすれば一番いいのかな。 せつなは少し変わってくれた。 ちゃんと言ってくれる。「辛い」、って。「心が痛い」、って。「まだ…見たくない夢を見る」、って。 でも、その後こう言うんだよね。 でも、大丈夫だから。 だんだん痛く無くなってきてるから。 夢も見なくなってきてるから。 今はまだ平気じゃない時もあるけど、癒える傷だって分かってるから……って。 でもね、せつな。その傷が癒えるのはいつなの? いつかは治るって事は、今はまだ治ってないって事でしょう?まだ痛くて辛くて怖いんでしょう? 祈里に会う度に固まった瘡蓋が剥がれるんだよね。 塞がりかけた傷が口を開けるんだよね。 あたし、せつなが一番大事なんだよ。 四人でいることより、せつなが辛くない方がいい。 あたしね、あんまり頭よくないから勘違いしそうになるんだ。 ブッキーとせつなが一緒に笑ってる。楽しそうに話してる。 ひょっとして、あの事そのものが悪い夢だったんじゃないかって。 ブッキーがあんな事するはずない。 全部…全部本当は幻だったんじゃないか……って。 ごめんね、せつな。 あたし、そんな自分が許せないんだ。 せつなはあたしにブッキーを許して欲しいって思ってるかも知れないね。 そうなんだ。あたし、弱いからせつなが笑ってくれてるとそれに甘えそうになるんだよ。 何もかも、無かった事にしたい誘惑に駆られるんだ。 知らんぷりして、ブッキーと元通りの仲良しになっちゃいそうに。 あたし、そんな自分が一番許せないんだよ。 せつなが許してもあたしは許しちゃいけないんだ。 せつなが忘れてもあたしは忘れちゃいけないんだ。 ブッキーに、あたしが許したがってるって…悟られちゃいけないんだよ。 「せつな、大好き……。」 「……うん、私も…。」 抱き締め、じゃれ合う内に解れてきたせつなの体。 甘えるように胸に顔を押し付け、目を閉じている。 お腹の辺りにせつなの胸を感じる。トクン、トクンと鼓動さえ優しく脈打つ気がするのは何故なんだろう。 「……あー、マズイな…。」 「…どしたの?」 「……ちょっと…、エッチな気分になってきちゃった…。」 一瞬目を丸くしたせつなは、ぷっと吹き出すと堪えきれないように笑い出した。 「なによぅ。笑う事ないじゃん。真面目に困ってるのに。」 「だから、どして困るの?構わないのに。」 「うー。じゃあお願いしますとも言いにくいじゃん。眠れないからってさぁ…。」 クスッと笑ったせつなが吐息まで蕩けそうなキスをくれる。 それだけで、頭がぼうっとなりそうだった。 今度はあたしがせつなの胸に顔を埋める。 あたしだけのせつな。こんな風に、せつなから求めて貰えるのはあたしだけなんだ。 つい、祈里の辛さに思いを馳せそうになる。 もし、立場が逆だったら。今こうしているのが祈里で、あたしは一人せつなを思って暗いベッドでうずくまっていたら。 あんな風に、微笑む事が出来るだろうか。 ダメ…、考えちゃ駄目。 せつなから安らかな眠りを奪ったのは間違いなく祈里なのだから。 愛した人に怯えた目で退かれる。 それがどれほど心を凍らせるのか。 それでも、胸の奥に刺さった棘。それを引き抜いて投げ付ける。 そんな事しか出来ない。 傷付く祈里を見て自分を納得させてる。 全部、あなたが悪いんだから…… ブッキーの笑顔を見て胸が痛むなんて気のせいだ。自業自得なんだから。 どんなにブッキーが泣いたって、きっとせつなが泣いた何分の一にもならないんだから。 ねえ、せつな。本当に平気なの? 傷を癒す事よりも、悪夢に追い立てられながら四人で過ごす事の方が大事なの? そう聞いても、きっとせつなはこう言うんだろうな。 にっこり笑って、「私は平気よ……」って。 ねえ、ブッキー。辛い? せつなは今もあたしの腕の中にいるんだよ。 もう二度と、あなたは触れる事も出来ないんだよ。 それでもいいの? ただ微笑んで側にいる。ずっとそれで我慢出来るの? あたしには、無理だ。 今の辛さもせつながあたしを選んでくれたから耐えられてる。 ブッキー、本当にいいの? このまま、ゆっくり壊れていくかも知れないのに。 黒ブキ29へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/666.html
【精一杯】フレプリで競作はどうでしょう【頑張るわ!】 お題は以下の通りです。 1、アカルンを使う 2、せつなを出来ればメインに(100%じゃなくても可) 3、クリスマスネタを踏まえる この流れで生まれた分岐的お話も含まれてます。 レス番号 作品名 作者 補足 競-2 【せっちゃん無双~悪戯天使】 競-2 魅惑の核弾頭少女せつな。3人に次々と手が伸びて。想いと思い出を―――――胸に 競-4 【幸せのもと~銀色の贈り物~】 恵千果◆EeRc0idolE せつなが出来る事。それは幸せの証をあなたへ…届ける事。 競-9 「First Christmas」 ◆BVjx9JFTno 初めてのクリスマス。大切な人への贈り物と、大切な人と過ごす時間。 競-26 【隠した秘密 あばきだす指】 恵千果◆EeRc0idolE 18禁 わたしのお願い、ちゃんと守ってくれたのね。ほんとにHな美希トナカイさんっ。 競-31 【「幸せ」を運べるように】 遊◆0LbB6EOWl. ラブ美希、せつブキ視点のA2カレンダーから発展したお話。せつなのサンタさんは果たして… 競-51 「おすそ分け」 ◆BVjx9JFTno 歌に込められた意味。感じた想いと、伝えたい想い。東せつなのクリスマスとは。 競-64 【眠れない】 遊◆0LbB6EOWl. 眠れないラブとブッキー。美希の魅力とせつなの温もりに果たして二人の理性は!? 競-76 「クリスマスに雪は降るの?」 ◆lg0Ts41PPY せつなにとって初めてのクリスマスは???だらけ。そんな中で彼女にちょっとした閃きが… 競-104 【せっちゃん無双~悪戯天使】 競-104 クリスマスパーティー。それはせつなにとって甘味な行事のはずだった。けれど、あゆみの、ラブの言葉が彼女を…。そして繋がるみんなの〝世界〟 競-111 『始まりはいつも突然に』 十和◆tb5qVrAOS. 今宵も繰り広げられる戦い。それは時と場所も選ばず。超大作序章ここに 競-125 「雨のち紙テープ」 ◆BVjx9JFTno 特別な日すら仕事になった美希への、クリスマスプレゼント。クローバーはいつも…一緒。 競-137 【桃色天使は小悪魔だった~バスルームの誘惑~】 恵千果◆EeRc0idolE 18禁 クリスマスパーティーも無事に終わり…のはずだった。アタシはラブの笑顔と突拍子も無い発言に思わず――― 競-153 「山のあなた」 SABI 継続型SS「Je te veux」の後日談的お話をクリスマスにお届け。せつなの幸せはすぐ傍にあって。 競-163 【もう一度奇跡を~せつなからの贈り物】 競-163 映画ネタがかなり含まれています。せつなとパッションが心ときめいた〝あの人〟に会いたくて 競-165 『真っ赤なハートのスペシャルゲスト!』 十和◆tb5qVrAOS. 主役はもちろん…。って何やってんの!?おまけにあゆみさんは普通に…。緊張感のあるドタバタ劇を。 競-185 煌く夜に、恋人達は 一路◆51rtpjrRzY 光り輝くイブの夜、家族と、そして恋人と過ごすせつなの胸中は……。そしてラブとのキスは? 競-204 『聖夜に響け 幸せのリズム』前篇 生駒◆ZU7CldKWo2 完璧少女な美希が、普段見られない姿で悪戦苦闘。その訳とは?そして、せつなは何思う… 競-212 「特別な夜だから」 ◆lg0Ts41PPY 18禁 恵千果さんの作品とコラボ。こちらでも〝甘い〟情事が展開されつつあって。 競-220 『聖夜に響け 幸せのリズム』後篇 生駒◆ZU7CldKWo2 美希の優しいハートに応えるせつな。本当に純粋で、みんなの夢を叶えようと〝あの人〟と共に今 競-246 「明日へと繋ぐ力」 SABI せつなからの贈り物を早速使う事に。祈里視点で描く彼女ならではの物語を。〝声〟届いてますか? 競-253 『ティータイムは秘密がいっぱい!?』 十和◆tb5qVrAOS. あゆみさん祭りwそして下される〝最下位〟にあの人ガックシ.....さらにはとんでもない肩書きにあの人もガックシw 競-266 『ピンクのハートは鮮血のしるし?』 十和◆tb5qVrAOS. 怒涛のキュアパッション待機!ひたすら待たされるのもあれなんで、いろいろと動き出しますが果たして・・・。 競-278 『紡いだ絆と偽りの言葉』 十和◆tb5qVrAOS. せっちゃんと言えばコロッケ。たっぷり作る姿を堪能しつつ、話は〝お母さん〟について。自慢出来る人とは… 競-292 『懲りない奴等とクリスマスケーキ』 十和◆tb5qVrAOS. 本当に懲りない面々。そりゃFUKO集めが本業ですけどね。明らかにタイミングは最悪すぎ! 競-305 『集う四つ葉と大団円』 十和◆tb5qVrAOS. プリキュアVSラビリンス勢。キレた彼女たちはハンパねぇ!と、戦闘中ですがピーチはパッションに〝アレ〟やっちゃいます 競-321 『彼女の涙と彼らの聖夜』 十和◆tb5qVrAOS. ウエスターのバカ!何やってんの!!ほら泣いちゃったじゃんか…。その姿に彼らは何かに気付く。 競-330 『世界で一番今日を輝く日にしたいから』 十和◆tb5qVrAOS. もう戻れないの?待ち焦がれる元の姿。一人じゃ何も出来ないけど、みんなと一緒なら奇跡は起こる!超大作ここに完結。 競-職人 読んでくれた同志たちへ 職人各位より 親愛なる職人たちから、同志たちへのメッセージ。競作を読んだ後にどうぞ!
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/350.html
第19話 薄闇 負の感情はコントロール出来る。 怒り、憎しみ、悲しみ、怯え。囚われず、外に昇華させる。目の前の倒すべき相手に。 ずっと、そうやって生きてきた。 痛みに怯えていては戦えない。恐怖に囚われていては判断を誤る。 心と体を切り離す訓練は出来ている。 体は戦う為の道具。心はそれを動かす為のもの。感情なんていらない。 そうでなければ、誰かを蹴落とすことすら出来なくなってしまうから。 (私は、弱くなってしまったのかしら………) 闇の中から伸びる手。 握り潰せそうな柔らかな手のひら。軽く捻り上げただけで折れてしまいそうな華奢な腕。 簡単に振り払えるはずの細く白い体が鉛のように重くのし掛かる。 体の内側を軟体動物が這い回り、食い荒らされるような感覚。 おぞましさに全身を総毛立たせるはずが、喉から漏れる息は確かな熱を帯びていた。 哀願の嗚咽は媚びるように甘ったるく響き、蹂躙されているはずの体は 悦びの雫を滴らせる。 (早く…終わって……) 意識を体から切り離し、外側から観察する。 冷めた素振りを見せては駄目。意地になって責めて来るから。 ある程度昂って見せなくてはいつまで経っても解放して貰えない。 もうそろそろ…達してしまった方がいいだろうか…。余りに早いとまた繰り返される。 あと少し、我慢すれば………。 「………せ…な、…せつな、せつな…。」 ビクリと体が跳ねる。 肩を軽く揺すられ、頬を撫でられていた。 暗い部屋、見馴れた天井、そして、覗き込んでいる愛しい顔。 切羽詰まったように張り詰めた声と裏腹に、見上げたラブの顔は穏やかに微笑んでいた。 (……………夢を……) せつなは眠気を覚ます振りで手の甲で瞼を擦る。 良かった。涙は出ていない。 「ゴメン、起こしちゃって。何だか眠れなくってさ。」 一緒に寝てもいい? そう、ラブはせつなのベッドに潜り込む。 うなされてたよ。 悪い夢を見たの? ラブは一言も聞かない。 せつなが話したくないのを知ってるから。 (ごめんね…、ラブ…。) ずっと添い寝して貰っていたのを少し前からちゃんと別々の部屋で眠るようにした。 まだ悪夢にうなされるせつなを心配したラブは躊躇ったが、 心細い時はちゃんと言うから。何でもちゃんと話すから。 そう言って何とか納得してもらった。 ラブはまるで雛を守る親鳥のようにせつなを包み込んでくれる。 その羽根は温かく、優しく、何時までもうっとりと身を任せていたくなる。 愛され、守られるのは何と心地好いのだろう。 でも、それだけではいけない。そう思ったから。 並んで歩きたい。 手を引かれ、後から付いていくのではなく。 並んで、手を繋いで、お互いの目線をちゃんと合わせて。 柔らかな胸で微睡む至福よりも、自分の足で立って見つめ合いたいから。 「ごめんね、ラブ。」 「…何が?」 「私、我が儘ね。」 「リアクションに困るな…。」 「どして?」 「だって…はい、とも、いいえとも答えにくい。」 髪を梳く指が耳を掠め、せつなはくすぐったさに忍び笑いを漏らす。 それに気付いたラブが、首筋、背中、脇腹、と摩る振りでくすぐっていく。 小さく身を捩りながらのじゃれ合い。 せつなの肌から不快に粟立っていた感覚が拭われていく。 寝室を別にしてもあまり変わらなかったのかも知れない。 だってラブはいつもせつなが助けを求める前に手を差し伸べてくれるから。 せつなに関しては妙に嗅覚が働くのか、虫が知らせるのか。 どんな悪夢を見ても、一人怯えながら朝を迎えた事は一度も無かった。 「ありがとう、ラブ。」 「だから、またリアクションに困るってば。」 「どういたしまして、で、いいのよ。」 「何だかなあ…。」 あんなのは何でもない事。 死んだ方がまし、そう思う程の苦痛を受けた事だってある。 それに、もっと手酷い裏切りにあったではないか。 全身全霊を捧げていた相手に切り捨てられ、命を奪われた。 塵芥程の重みもなかった命。誰にも顧みられる事のなかった過去の自分。 それに比べれば……… 愛する人がいる。 温かい家族がいる。 笑い合える友人がいる。 私は、幸せ…。 クスリ…と、せつなは笑う。 分かっている。 過去を引き合いに出して比べる事に意味なんてない。 もっと酷い目にあった、だからこれくらい我慢出来る。 あれに比べたら大した事ではない。 こう言う考えは危険だ。 危険で、不健康で、心身を蝕む。 大きくても小さくても傷は傷。 大怪我でも早急に的確な処置を施せば後遺症もそれだけ軽く済む。 軽症だと侮って手当てを誤れば、化膿してそれが命取りになる事だってある。 身も心も弄ばれ、深く傷付いた。 その自覚はある。祈里の為にその事で自分を誤魔化す気はない。 ただ祈里の謝罪を受け入れ、許す、と言う事も出来る。 でもそれは…何もかも水に流し、受け入れる事はラブに対する裏切りに思えた。 ラブは、深く深く愛してくれている。 溺れてしまいたくなるほどに。 せつなの中にある「愛している」、と言う想い。 ラブに対してだけ感じる、胸が痛み、溢れ零れる温かな涙を湛えた想い。 それは、一滴たりとも他の誰かに向ける訳にはいかないから。 せつなの中に巣食う菌糸のような膿んだ傷。 今日、祈里には気取られてしまっただろう。 祈里は罪の意識に苛まれているかも知れない。 いや、間違いなくせつなの中の祈里に対する恐怖を見付け、自分を責めているだろう。 痛々しいまでの笑顔。 それでも、せつなはもう一度自分から祈里に触れる事は出来なかった。 手を取って、「大丈夫よ。」、そう微笑めば祈里はホッとしただろうに。 それでも…、瞬時に粟立った肌と震える手は誤魔化せそうになかったから。 布団の中でラブに全身を押し付ける。 (まだ…駄目なのかしら…) まだ傷は痛んでいる。血は流れ続けている。悪夢は途切れる事なくやってくる。 まだ、ラブには信用して貰えそうにない。 大丈夫、平気よ。そう笑って見せても余計に心配を掛けてしまうだろう。 以前、ラブに言われた。 せつなを安心させてあげられてなかった。 だから、信じて貰えなかった。 今なら、その意味が分かる。 せつなの大丈夫、は無理していると言う事。 せつなの心配しないで、は痛くて堪らないと言う事。 そしてボロボロになりながら、平気よ。と笑うのだ。 多分、ラブにはそう受け取られている。無理もない。 偽りの姿で始まった出会いだったから。 何度も嘘を付いたから。 騙し、振り回そうとしたから。 そして、自分を大切にする。そんな事、考えた事もなかったから。 せつなはラブの胸に顔を埋め、その鼓動を聞く。 規則正しく脈打つ命。子守唄のように愛しい響き。 お互いの鼓動を捧げ合った片身。 どうすれば、分かって貰えるだろう。 痛む傷。だけど以前よりも疼かなくなってきている。 流れる血。だけどもう止まっている時間の方が長い。 追い掛けてくる悪夢。それも毎晩ではなくなった。 目を覚ましても泣いている事も減っている。 (ねえ、ラブ。私、あなたが思ってるほど辛くはないのよ…。) 確かに傷は癒えてはいない。 それでも、だんだん傷は小さくなっていってる。 傷痕は残るだろう。古傷となって思い出したように痛む事もあるかも知れない。 だから、ラブ。我が儘を言うけど許して欲しいの。 私、ちゃんと治して行くから。 痛みに知らんぷりせず。ちゃんと向き合うから。 待ってて欲しい。 一緒に、手を繋ぎながら。 あなたが側にいてくれる。 あなたの一番近くにいたい。 だからこそ、自分の足で立っていられるようになりたいの。 ………… ……………………… せつなに関してはあたしは異常に勘が働くのかも知れない。それとも虫の知らせ? 壁の向こうの様子を伺い、何となく部屋を覗く。 寝苦しそうにしている時もそうでない時も、夢見の悪い時は分かるようになった。 せつなは人の気配に敏感。 良く眠れている時はあたしが部屋に入った時点で気付いている。 逆に悪夢に囚われている時ほど中々目覚めない。 はっと目を開け、あたしの顔を見てホッと息を付く。 あたしはなるべく穏やかな顔をするように頑張る。せつなに安心して貰いたくて。 心配そうな顔するとせつなの方が無理して笑おうとしちゃうんだよね。 ごめんね。 ありがとう。 せつなは何度も言うけど、あたしどうすれば一番いいのかな。 せつなは少し変わってくれた。 ちゃんと言ってくれる。「辛い」、って。「心が痛い」、って。「まだ…見たくない夢を見る」、って。 でも、その後こう言うんだよね。 でも、大丈夫だから。 だんだん痛く無くなってきてるから。 夢も見なくなってきてるから。 今はまだ平気じゃない時もあるけど、癒える傷だって分かってるから……って。 でもね、せつな。その傷が癒えるのはいつなの? いつかは治るって事は、今はまだ治ってないって事でしょう?まだ痛くて辛くて怖いんでしょう? 祈里に会う度に固まった瘡蓋が剥がれるんだよね。 塞がりかけた傷が口を開けるんだよね。 あたし、せつなが一番大事なんだよ。 四人でいることより、せつなが辛くない方がいい。 あたしね、あんまり頭よくないから勘違いしそうになるんだ。 ブッキーとせつなが一緒に笑ってる。楽しそうに話してる。 ひょっとして、あの事そのものが悪い夢だったんじゃないかって。 ブッキーがあんな事するはずない。 全部…全部本当は幻だったんじゃないか……って。 ごめんね、せつな。 あたし、そんな自分が許せないんだ。 せつなはあたしにブッキーを許して欲しいって思ってるかも知れないね。 そうなんだ。あたし、弱いからせつなが笑ってくれてるとそれに甘えそうになるんだよ。 何もかも、無かった事にしたい誘惑に駆られるんだ。 知らんぷりして、ブッキーと元通りの仲良しになっちゃいそうに。 あたし、そんな自分が一番許せないんだよ。 せつなが許してもあたしは許しちゃいけないんだ。 せつなが忘れてもあたしは忘れちゃいけないんだ。 ブッキーに、あたしが許したがってるって…悟られちゃいけないんだよ。 「せつな、大好き……。」 「……うん、私も…。」 抱き締め、じゃれ合う内に解れてきたせつなの体。 甘えるように胸に顔を押し付け、目を閉じている。 お腹の辺りにせつなの胸を感じる。トクン、トクンと鼓動さえ優しく脈打つ気がするのは何故なんだろう。 「……あー、マズイな…。」 「…どしたの?」 「……ちょっと…、エッチな気分になってきちゃった…。」 一瞬目を丸くしたせつなは、ぷっと吹き出すと堪えきれないように笑い出した。 「なによぅ。笑う事ないじゃん。真面目に困ってるのに。」 「だから、どして困るの?構わないのに。」 「うー。じゃあお願いしますとも言いにくいじゃん。眠れないからってさぁ…。」 クスッと笑ったせつなが吐息まで蕩けそうなキスをくれる。 それだけで、頭がぼうっとなりそうだった。 今度はあたしがせつなの胸に顔を埋める。 あたしだけのせつな。こんな風に、せつなから求めて貰えるのはあたしだけなんだ。 つい、祈里の辛さに思いを馳せそうになる。 もし、立場が逆だったら。今こうしているのが祈里で、あたしは一人せつなを思って暗いベッドでうずくまっていたら。 あんな風に、微笑む事が出来るだろうか。 ダメ…、考えちゃ駄目。 せつなから安らかな眠りを奪ったのは間違いなく祈里なのだから。 愛した人に怯えた目で退かれる。 それがどれほど心を凍らせるのか。 それでも、胸の奥に刺さった棘。それを引き抜いて投げ付ける。 そんな事しか出来ない。 傷付く祈里を見て自分を納得させてる。 全部、あなたが悪いんだから…… ブッキーの笑顔を見て胸が痛むなんて気のせいだ。自業自得なんだから。 どんなにブッキーが泣いたって、きっとせつなが泣いた何分の一にもならないんだから。 ねえ、せつな。本当に平気なの? 傷を癒す事よりも、悪夢に追い立てられながら四人で過ごす事の方が大事なの? そう聞いても、きっとせつなはこう言うんだろうな。 にっこり笑って、「私は平気よ……」って。 ねえ、ブッキー。辛い? せつなは今もあたしの腕の中にいるんだよ。 もう二度と、あなたは触れる事も出来ないんだよ。 それでもいいの? ただ微笑んで側にいる。ずっとそれで我慢出来るの? あたしには、無理だ。 今の辛さもせつながあたしを選んでくれたから耐えられてる。 ブッキー、本当にいいの? このまま、ゆっくり壊れていくかも知れないのに。 第20話 許されなくても(R18)へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/485.html
『初恋の終わり方』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY …どうして、彼女なんだろう……。 始めは気が付かなかった。いつも視線の先に彼女がいる。 ふと気が付くと彼女の事ばかり考えている。 どうすれば喜んでもらえるか。どうすればもっと笑顔が見られるか。 どうすれば、もっとわたしを見てもらえるのか……。 ずっと、そんな事ばかり考えている自分が少し不思議だった。 だから必死に理由を考えた。 彼女はこちらの世界を何も知らない。すべてを失い独りきりになってしまった彼女。 仲間なんだから、友達なんだから、心配するのは当たり前。 彼女にはわたし達仲間しかいないんだから。もっともっと仲良くならきゃ。 心配して当然よね? それはとっても納得の行く理由でわたしをホッとさせる。 何もおかしくないよね?気になって当たり前よね?そうに決まってる。 でも、気付いてしまった。 わたしが彼女を見つめている、それを刺すような視線で 射抜かれている事に。 その瞬間、すべてが分かった。 わたしは初めて人を好きになった。 人を好きになるって不思議。自分が恋してる筈なのに、自分で相手を選べないなんて。 気付く筈がない。相手が同い年の女の子だなんて。 気が付かないから、気持ちが止められない。 だから、自覚した時にはもう手遅れ。 恋の神様はとんでもなく意地悪。 突然、初恋に落としておきながら、その相手は絶対に手に入らない人だなんて。 だって見れば分かる。彼女の眼にはたった一人しか映ってない。 彼女は、せつなちゃんは、ラブちゃんしか見ていない。 恋の神様はとんでもなく残酷。 初恋は実らないって言うから、文句を言うのはお門違いかも知れない。 でも自覚した途端に失恋決定なんて、ちょっとあんまりだと思うの。 そして次に感じたのが、ラブちゃんに対する信じられないくらいの苛立ち。 どうして、そんな目でわたしを見るの?もしかして分かってないの? せつなちゃんはとっくにラブちゃんのものじゃない。 あんなに近くでせつなちゃん見てる癖に!信じられない! 無性に腹が立った。今までラブちゃんに、いいえ、誰に対してでもこんな 苛立ちを覚えた事なんてなかった。 わたしがどんな欲しくても手に入らないモノをとっくに手に入れてる癖に、 その事に気付きもせず、こちらに嫉妬を向けてくる。 ラブちゃんにこんな面があったなんて。ついでにわたしにも。 ほんの少し、意地悪したくなったの。 ラブちゃんの視線に気付かない振りをする。 わざとせつなちゃんの体に触れ、二人で出掛ける約束を取り付ける。 ラブちゃんには解らない様な本の話をする。 こちらの事を勉強したいって言うせつなちゃんに、色々本を薦めたのはわたし。 元々すごく頭が良いんだろうな。砂が水を吸い込むようにって こう言う事なんだと思った。 せつなちゃんは勉強熱心で、好奇心旺盛で、今ではわたしの方が 教えて貰う事もあるくらい。 せつなちゃんは馴れ馴れしいくらい親しげなわたしの態度にも、 嬉しそうに可愛い笑顔を向けてくれる。 ふざけて抱き付いたりしても、「なあに、ブッキー?」なんて警戒心の欠片もない。 わたしはその夜、せつなちゃんの甘い香りと感触に一晩中眠れなかったくらいなのに。 せつなちゃんの笑顔に触れる度、どんどん心が削られて行く。 見る度に幸せになれた筈の笑顔が、どんどん苦い痛みを打ち込んでくる。 だって、それは友達だから見せる笑顔。それ以上でも、それ以下でもない。 でも、もし彼女がわたしの気持ちを、いいえ、わたしの中に渦巻く欲望を知れば…… それすらも得られなくなる。 このままじゃ何もかも失ってしまう。大好きな人も、親友も、自分の心さえも。 恋心を隠して友達として側にいる。それが一番だと思ってた。 手に入らない。諦められない。でも失いたくない。 こんなに苦しいなんて知らなかったから。 そしてせつなちゃんを想うのと同じくらい、ラブちゃんの気持ちが痛い。 だって分かるから。ラブちゃんがどんな気持ちでいるか。 いつも元気いっぱいで天真爛漫なラブちゃん。引っ込み思案なわたしには ラブちゃんは憧れだった。 太陽の様な笑顔はいつも眩しくて、どんな時でも周りを明るく照らしてくれる。 ラブちゃんが大丈夫って言えば、どんな事でも大丈夫。 ラブちゃんが頑張ろうって言えば、辛くても踏ん張れる。 ラブちゃんはいつも自分の事は後回し。人の為に笑って泣いて。 周りの人の笑顔が自分の幸せ。 そのラブちゃんが、初めて身勝手なまでの独占欲を見せて執着している。 『あたしのなんだから!』『誰にも渡さないから!』 その瞳が、そう叫んでる。 物心つく前から一緒にいたんだから、分かる。 あんなふうに、ラブちゃんが我が儘とも言える欲望を剥き出しにするなんて、 もうこの先ないんじゃないかな。 一生に一度の我が儘を、血を吐くような思いで叫んでる。 『お願いブッキー、…諦めて。』 少し前まではいくらでも涙が出た。 せつなちゃんとの何気ないやり取りが嬉しくて。 叶わない想いが辛くて。 ラブちゃんの視線が痛くて。 親友にそんな思いをさせている事が恐くて。 自分のどろどろした心が穢い物に思えて。 でも、今は何を思っても涙は出ない。 どんなに胸が締め付けられても、心が悲鳴をあげても、 出てくるのは焼け付くような溜め息ばかり。 わたしは、決めた。壊れてしまうのを恐れて自分を磨り減らすより…… 自分で、いえ、せつなちゃんに終わらせてもらおう。 せつなちゃんがラブちゃんを裏切る事は、あり得ない。 だから、告白して、叶う筈のない頼み事をして、 ……思い切り、振ってもらえばいい。 せつなちゃんは、ショック受けちゃうかな。泣いちゃうかな。 でも、いいよね?せつなちゃんにはラブちゃんがいるから。 きっとラブちゃんが慰めてくれる。 「せつなちゃんが、好きなの……友達としてじゃなく……。」 そう言った瞬間、今すぐ世界が崩壊しても構わない。本気でそう思ってしまった。 魂が抜けて行くのが見えるみたい。それくらい全身の気力を振り絞った。 言わなきゃ良かった。でも言わないと、わたしがどうにかなっちゃいそうで。 いやいや、もうとっくにどうにかなってるのかも。 でないと、できるはずがない。女の子同士で、しかも親友の恋人に告白なんて……。 せつなちゃんは新しいプリキュアの仲間。新しいクローバーのメンバー。 そして親友の、…ラブちゃんの大事な大事な人。 散々悩んで、決死の覚悟で臨んだのに、言葉が口から離れた瞬間から 後悔で身が縮み上がる。 せつなちゃんの顔が見られない。その顔にどんな表情が浮かんでいるのか、 恐くて 確認出来ない。 暫くたっても何も言わないせつなちゃんに、恐る恐る、顔を上げる。 その時彼女の顔に浮かんでいたのは、驚きでも、軽蔑でも、嫌悪でも、哀しみでもなく… わたしが怖れていた、どんな否定的な表情でもなかった。 ただただ、恐ろしいほどに真剣な、真摯な顔。こちらが怯みそうなほどに。 「それで、ブッキー。あなたはどうしたいの?」 その言葉には揶揄するような響きも、こちらへの侮蔑も感じられない。 ひたすら誠実に、相手の気持ちに向き合おうとする真っ直ぐな視線。 「私は、あなたの気持ちには応えられない。…それは、わかってるんでしょう?」 せつなちゃんの視線に射竦められる。 もっと動揺されると思ってた。驚いて、おろおろして、 もしかしたら泣いてしまうんじゃないかって。 けど、目の前にいるせつなちゃんには、そんな弱さは微塵も感じられない。 どんなものからも絶対に逃げ出さない、毅然とした姿がそこにあった。 「ラブちゃんが……好きなのよね…。」 そう言うと、せつなちゃんの眼がふっと柔らかくなった。 「分かってるの……わたしなんか入り込む隙間はないって…、でもね、でも…」 「ありがとう。」 「…!?」 「ありがとう。私を好きって言ってくれて。」 穏やかに、微笑みさえ浮かべて彼女は言う。 「ブッキーが、好きになってくれて……私は嬉しいわ。」 「……せつなちゃん…。」 多分、わたしは呆然としてたんだと思う。だってあまりにも予想外な言葉だったから。 悲しい顔で拒否される。ブッキーは大切な友達だと諭される。 このどちらかしかないと思ってた。 間違っても、『ありがとう』や『嬉しい』なんてどんな形でも言われるなんて 想像の埒外だ。 「…せつなちゃん、ワケ、分かんないよ。…わたし、振られたんだよね…?」 「そう…かしら。正直な気持ちなんだけど…。ブッキーは大切な人だから。」 「友達として…でしょ?」 「……うーん。ちょっと、ちがうかな。」 じゃあ、何なの?私の戸惑いが伝わったのか、せつなちゃんもちょっと 考え込むような顔をする。 「……水……かな……。」 「…水……?」 そう、と彼女は頷く。 水がなければ人は生きていけないでしょ? いくら太陽が照らしても水がなければどんな生き物も死んでしまう。 だから、あなたは私にとっては水なの。 そう言ってわたしを見つめるせつなちゃん。正直よくわからない。 はぐらかされてるような気もしなくはない。 でも彼女は大真面目な顔で。 その顔を見てたら何だか少し可笑しくなってきた。 まさかこの場面で笑える自分がいるとは思いもしなくて…。 「じゃあ、わたしがいないとせつなちゃんは死んじゃうの?」 「死んじゃうかも知れないわね。」 「わたしが水ならラブちゃんは太陽?」 そう聞くとせつなちゃんは嬉しそうに、にっこり笑う。 その笑顔があんまり可愛くて、ちょっぴり意地悪な質問をしてみる。 「じゃあ、太陽が無くなったら?」 水がなければ死んでしまう。それなら太陽が無くなればどうなるの? 「…あのね、世界が滅ぶの。」 相変わらず大真面目にせつなちゃんは答える。 死んでしまうのと、世界が滅ぶの、どう違うのか。 同じように思う。でも全然違う気もする。 分かるのは、せつなちゃんにとっては全然別物だって言う事。 「その時は…せつなちゃん、どうするの?」 「どうもしないわよ。世界が滅ぶんだもの。それで、おしまい。」 さらっと言ってるけど、内容はとんでもないよ。せつなちゃん。 でも、何となくわかった。せつなちゃんのすべてはラブちゃんがいることで始まってる。 だから太陽が無くなり、世界が滅んでしまえば、死すら意味がなくなる。 辛い事も悲しい事も、恐怖さえもどうでもいいこと。 でも、言ってる事はのめり込み過ぎで怖くなるくらいの筈なのに、 思わず口に出てしまった言葉は… 「……いいなぁ、ラブちゃん。」 そう思ってしまった。羨ましいって。 こんなにも誰かに想われるってどんな気持ちなんだろう? 「そう?ちょっと気持ち悪くない?入れ込み過ぎでしょ?」 「…それ、ものすごいノロケてるよ。せつなちゃん。」 ラブは大変だと思うわよ、なんて相変わらずせつなちゃんは真面目顔のままで うんうんと頷いている。 「そっかあ…」 そっか、そうなんだよね。始めから分かってたのに。 わたしが好きになったのは、ラブちゃんが大好きなせつなちゃん。 もし、ラブちゃんではなくわたしを選ぶようなら…それはわたしが好きになったせつなちゃんじゃないのかも知れない。 (でも、水だって相当大事よね。なんせ、無いと絶対に死んじゃうんだし。) 例えそれが、太陽があってこそのものだったとしても。 わたしは彼女の世界になくてはならないものなんだもの。 「私ね、欲張りになることにしたの。大事なものは一つもなくしたくない。 だから……だから、ブッキーにも側にいて欲しい。ずっと…今までみたいに。」 「…わたしが、側にいるのが辛いって言っても?」 「そう!」 「わたしが泣いても?」 「そう!」 「勝手ね。せつなちゃん。」 「何とでも言って!」 せつなちゃんは少し怒ったような顔をして……、あぁ、分かっちゃった。 ずっと泣きたいの堪えてるんだ。 わたしは俯いて肩を震わせてしまった。どうしよう、堪えられないかも… あぁっ、せつなちゃんが泣きそう!まずい! …ぷっ…クスクス! 良かった、笑えた!せつなちゃん、ほっとしてる。 「…もうっ、ブッキーったら…。」 「クスクス…っごめん、だってせつなちゃん、何だかラブちゃんに似てきたんだもの。」 せつなちゃんは小さな子供みたいにほっぺを膨らませて赤くなってる。 可愛いなぁ、もう。やっぱり大好き。 だからもう、いいや…。 「うん、いいよ。」 「……??」 「側にいてあげる。」 「……ホントに…?」 「うん、わたし達は親友。そうよね。」 「……いいの?」 「ダメって言ったら諦めるの?」 「絶対にイヤ!」 そこは即答なのね。あらら、何だかせつなちゃんふにゃふにゃになってる。 実は物凄く力入ってたんだろうな。わたしもだけど。 言っちゃおうかな。でも言ったら、またせつなちゃん困っちゃうかな。 でも、これだけは最初から決めてたんだし…。 「あのね、それでね…一つだけ、お願い聞いてくれないかな。」 最後にこれだけ。これでこの恋は絶対におしまいにするから。お願い。 ずっとずっと、してみたかった事なの。絶対にせつなちゃんでなきゃ、嫌なの。だから、お願いします。 「キス……したいな。」 言っちゃった……。 ああ、また顔上げられなくなってきた。なんでこんなにうじうじしてるんだろう。 もっと潔くなりたいのに。 「…わかったわ。」 「?!!!」 「私から、させてくれる?」 俯いたわたしの顔をせつなちゃんがそっと両手で挟む。 小さな手。細い指。 せつなちゃんの気配が近づいてくる。 わたしは目を閉じてゆっくり顔を上げる。 ふわり…と、前髪がはらわれ、額に柔らかい感触。 違う…、思わず目を開け、そう言おうとする… すぐ目の前にせつなちゃんの顔。ドキッとした。なんて綺麗なんだろう。 わたしの好きな人は、本当に本当に綺麗な人。 黙って…そう言うように、せつなちゃんは微笑んで唇に人差し指を立てる。 もう一度、額に。次に閉じた瞼に。頬に。 触れた場所からせつなちゃんがふわふわ染み込んでくる。 渇いた胸の奥から温もりが泉のように溢れ、指先まで潤していく。 そして、最後に唇の両端に口付けたのち、唇同士が重なるように押し付けられる。 更にゆっくり、角度を変えて何度も重なって…唇が離れて行く。 全身でせつなちゃんの息遣いを感じる。 思わず、ほぅ…と息が漏れる。 その時、僅かに開いたわたしの唇にもう一度強く唇が押し当てられ、 唇よりも更に柔らかく熱いものが滑り込んでくる。 それはわたしの口の中を戯れるようになぞり、ほんの一瞬、舌先を絡め取っていった。 甘美、と言うのはこういう感覚なのだろう。 痺れるように甘く、震えるくらいに切ない感触。 「さようなら、祈里。」 吐息のような彼女の声が耳朶をくすぐり、全身を包んでいた柔らかな気配が 遠ざかっていく。 (ありがとう。)そう言おうと思ってたのに。 声が出ない。体が動かない。呼吸すら忘れてしまったかのよう。 少しでも長く、彼女のすべてを刻み付けておきたくて。 いつしか、全身を満たしていた潤いが瞼から零れ、頬を濡らしている。 もう、一生泣く事なんかないんじゃないかと思ってたのに。 どれくらい経ったのだろう。 漸く息をつき、目を開けるともうそこにせつなちゃんの姿はなかった。 夢だったの…?そんな気さえするくらい体も頭もクラクラしてる。 視線の先に、トレイに乗ったままの汗をかいたグラスが二つ。 確かに彼女はここにいた。 大きく深呼吸して… 「悪く…ないと…思うのよね。」 声に出してそう呟いてみる。 初恋の終わり方としては、悪くないんじゃないかって気がするの。 好きで好きで、どうにかなってしまうんじゃないかって思うくらい 好きな人に決死の覚悟で告白して。振られて。 でも最後に大好きな人は震えるくらい甘い、恋人同士のキスをくれた。 初恋は実らないって言う。でも、そうじゃなかった。 わたしの初恋は実らなかったんじゃない。ただ終わっただけ。 だって、あの瞬間だけ、あの人は確かにわたしの恋人になってくれたんだから。 恋の神様はそんなに残酷じゃない。 こんな初恋をくれたんだから。それに…… わたしはきっとまた、誰かを好きになれる。今度は、わたしだけを見てくれる人を。 ラブちゃんとせつなちゃんみたいに、お互いでなきゃダメって人に。 わたしは大丈夫。 明日から、また笑顔になれるはず。 それに、わたしは、きっともっと素敵な恋に巡り会える。 そう、わたし信じてる。 他CP10へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/363.html
【異分子】/恵千果◆EeRc0idolE 「せつなちゃーん、ちょっと洗濯もの取り込んでくれないかしら」 「はーい、お母さん」 そう答えながら、私は読みかけの本を置いて立ち上がり、自室を出て階下へと降りる。 私がラブの家にお世話になり始めてから、ずいぶんたった。ラブはいそいそと私のことを構ってくれるし、お母さんやお父さんは娘の様に優しく接してくれている。相変わらずの日々。 でも、こんなにも穏やかな日常のなかで、ふとした拍子に浮かび上がる感情がある。波のない凪いだ海が急に時化た時のような…これが不安というものなのだろうか。 「せつなぁ」 名前を呼ばれて、洗濯ものをたたんでいた手が止まる。 笑顔のラブがリビングに入って来て、横に座る。たたむのを手伝いながら、こう切り出した。 「せつな、どうかした?」 「…かなわないわね、ラブには。隠したっていつもお見通しなんだから」 ラブはまっすぐに私を見つめている。 「何考えてたの?」 ラブに不安を吐き出すのは心苦しいけれど、ラブだからこそ、言えるのかもしれない。 「私ね、今とっても幸せなの。でも、幸せ過ぎて時々不安になるみたい。 時々ね、まだ全然この世界に馴染めてないって感じる瞬間があって、すごく怖くなるの…。 この世界から受け入れられていないんじゃないかって。ねぇラブ、私、本当にここにいていいの?」 「当たり前じゃない!」ラブは声を荒げた。 「せつな、アタシの家族や美希タンやブッキーはちゃんとせつなを受け入れてる。それに…」 ラブの両腕が伸ばされ、強く抱きしめられた。ラブの温もりが私を包む。 「例えこの世界がせつなを受け入れなくても、アタシがせつなの居場所になるから」 「ラブ…ありがと」 嬉しかった。さっきまでの漠然とした不安を、ラブの言葉が消し去ってくれたみたい。 「やだなぁー泣かないでよ、せつな。アタシ、せつなの笑った顔が大好きなんだから」 「私もなりたい、私もラブの居場所になりたい」 「…もうなってるよ」 ラブは照れながら、そっとキスをくれた。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/38.html
第3話 彼女のお人形 「ちょっとラブ、もうお湯沸いてるわよ?!」 「は~い。・・・ブッキー、そっちタマネギ切ったぁ?」 「ごめん、今やってるー。せつなちゃん、サラダは大丈夫?」 「今、精一杯キャベツ刻んでるわ」 今日は、ラブちゃんのお家で、お泊り会。 ご両親もお出かけなんで、わたし達4人でお夕飯の準備をしてるところ。 メニューは、カレーライスと、サラダ。 わたしはカレーに入れるお野菜を切る当番なんだけど。うー、タマネギが目にしみる・・・。 ・・・・・・でも、これくらい我慢しないと。 みんな一緒とはいえ、せつなちゃんと一晩過ごすことができるんだもの。 もう一週間も前から、今日という日が来るのを夢にまで見たんだし・・・・・・。 それに!ご、ご飯の後にはみ、みんなでおおおおお風呂入ることになってるし・・・・・・。 一気にわたしの頭の中には邪な妄想が広がる・・・・・・。 (ブッキー、背中流してあげるわ。こっち来て) (せせせせつなちゃん!い、いいって、それくらい自分でやるから!) (?何を恥ずかしがってるの?・・・ほら、次は前を洗ってあげるから、あたしの方を向く!) (いや~!いくらこっちの世界の常識に疎くても、やり過ぎだよ~!!) 「・・・・・・ブッキー・・・お腹空いてるからって、はしたないんじゃないの?・・・よだれ出てるわよ」 「・・・・・・は!え!?ゴメンゴメン!」 美希ちゃんにたしなめられ、現実に戻るわたし。せつなちゃんにだらしない子だって思われちゃう・・・。 「―――――痛っ・・・!」 その時、せつなちゃんが小さな呻きを漏らした。 見ると、包丁を離し、右手で左手の指を押さえている。 「せせせせつなちゃん!指切ったの?!ちょ、ちょっと待って―――」 慌てたわたしは、咄嗟にいつも持っている救急セットを取り出そうと、バッグに手を伸ばす。 「―――――せつなっ!手出してっ!!」 わたしの行動よりも早く、ラブちゃんがせつなちゃんの元へ駆け寄る。 彼女はせつなちゃんの左手を掴むと、躊躇うことなく、怪我している指を口に含んだ。 「―――――――!!」 その一連の動きから、目を離せなくなった。 「・・・・・・・・・」 「・・・ラ、ラブ・・・そ、そんなとこ・・・な、舐めたら・・・き、汚いわ・・・」 せつなちゃんが、顔を赤くして、ラブちゃんを止めようとする。 でも、ラブちゃんはそんな制止も聞かず、指を口から離そうとしない。 それは、甘くて淫靡な、恋人同士のキスに見えた。 ラブちゃんの口元からする、ぴちゃ、ぴちゃ、という水音のような響き。 その度にせつなちゃんは押し殺した喘ぎを漏らし、背を反らす。 バッグに手を入れたまま、わたしは固まっていた。 目を逸らしたいのに、逸らせない。 ・・・・・・嫌だ・・・こんなの見たくない・・・・・・。 一瞬、ラブちゃんとわたしの目が合う。 「―――――!」 その目が、嘲笑っているように、感じた。 高価な玩具を、手に入らない子に自慢している子供のような目―――。 ―――これはあたしだけのモノよ?羨ましいでしょう? ・・・彼女は、わたしに、そう言っているのだ。 ―――永い一瞬が、過ぎた。 ゆっくり、別れを惜しむように、唾液の糸を引きながら、ラブちゃんが口を離す。 「ンぅっ!・・・・・・ラ、ラブぅ・・・・・・」 「・・・・・・こっちの世界では指を切ったら、こうするんだよ、せつな・・・・・・」 頬を染め、息を荒げているせつなちゃんに、ラブちゃんは優しく、ふしだらに微笑みかける。 「・・・・・・ブッキー、バンソーコー、ちょうだい。」 「――――――え?!あ、あ、うん!」 その声に我に返ったわたしは、ラブちゃんにバンソーコーを渡す。 彼女は、可愛がっているお人形にリボンでも結ぶように、それをせつなちゃんの指に巻きつける。 ・・・わたしは、魂の抜けた案山子みたいに、その光景を見つめる事しか出来なかった。 「ちょっとブッキー、あなたもどっか怪我したの?」 「・・・え?」 「・・・・・・もう、涙浮かべてるじゃないの!」 美希ちゃんに言われるまで、気付かなかった。 「や、やだ。タ、タマネギ切ってたから・・・い、イタタタ・・・・」 ゴシゴシ、っと目をこする。 ・・・・・・本当に痛いのは、目なんかじゃないのに。 目を開けたとき、再びラブちゃんと視線が絡む。 ――――せつなで遊んでいいのは、あたしだけなの。あなたの手は決して届かない・・・・。 長い夜は、まだ始まったばかりだった。 了 第4話は分岐しており、ふたつとも同じ第5話に繋がっています。 イライラがテーマの話を選択する方は、第4-1話 走り出した日へ 嘘がテーマの話を選択する方は、第4-2話 悲しい嘘に、乾杯をへ